FC2ブログ

Entries

ゆきのふるあさ さむいみち

 ほんの小さな頃、私は絵本を沢山持っていたらしい。ほとんど記憶にないのだが、小さいみかん箱に一杯あったそうだ。田舎だったし当然のように祖父母と同居の生活で、しかも一家の経済は祖父が差配していたから、親が買ってくれたとは思えない。多分大半は親戚から譲られたお古だったのだろう。
 祖父はとても厳しい人だったが、戦後暫くして亡くなった叔母と入れ替わるように生まれた私に対しては、何か思うところがあったのか自分のそばに置きたがったようだ。叔母は戦時中兄達が出征して男手がなくなった後、農作業で無理を重ねて病で寝付いたと聞いている。にこりともせず、小さな子供を甘やかしたり機嫌を取ったりするようなことは決してしない祖父のそばで、私はいつもびくびくしていた。反抗など無駄だとあきらめていたような気がする。
 2歳違いの弟が生まれて母親の手がそちらにかかるようになると、私はより祖父母の側へおしやられたようだ。祖父は祖父なりに小さな孫の気持ちを惹きつけようとして、夜になるとひざの上に乗せて絵本を繰り返し読み聞かせていたのではないか。
 母がよく言っていたが、私が読み聞かせてもらっていた絵本の一節を、赤ん坊だった弟が覚えてしまったことがあったらしい。まだろくに口もきけないのに、半分眠りながらもごもごと暗記してみせて、大人たちが驚いたそうだ。 
  
  ゆきのふるあさ さむいみち      雪の降る朝 寒い道
  うしわかまるをふところに       牛若丸をふところに
  いまわか おとわか てをひいて   今若 乙若 手を引いて
  やまとのくにへ ゆきましょう     大和の国へ 行きましょう
  かあさんときわは なきました     母さん常磐は 泣きました

 後年何度も母は弟が暗記してしまったというその一節を繰り返した。何度も聞いたので私まで覚えてしまった。


関連記事
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://ohutarisama331.blog120.fc2.com/tb.php/9-5be50a04

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

ohutarisama

Author:ohutarisama
中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
夫と猫2匹と暮らしています。リンクはフリーということでお願いします。

月別アーカイブ

 

検索フォーム

QRコード

QR