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「冷血」を読んだ

 髙村薫「冷血」をやっと読んだ。「太陽を曳く馬」からは、袋小路で行き止まって迷うばかりでどこにも進むことができない思索をたどるようだ、という印象を受けていた。私自身もそこから進むことができなくなっていたが、日にちを空けて「冷血」を読んだところ、前作よりはずっと読みやすかった。

 人は思いつきや衝動で動くことがよくある。犯罪行為を思いつきや衝動でされては、被害者はたまらないだろうと思う。ところが「冷血」の登場人物は行き掛りで衝動的に殺人を犯す。
 犯人を捕らえるのは比較的容易であった。ところがその先、告訴に向けて事件の全容を解明する過程が困難を極める。何よりも動機の説明がつけられないのだ。
 以前作者が「犯罪に動機が必要だと知って驚いた」と書かれていたのを読んだ記憶がある。「太陽を―」では犯人に軽度の知的障害があるという設定になっており、裁判では動機の解明より責任能力に比重が置かれた。その一方で作者は、小説の中での合田刑事に託してであるが、犯罪の動機に踏み込む試みをひしひしと続けておられたのではないかと思う。
 結局分からないのだ、という結論が「冷血」で表明されたということなのか。

 「犯罪の被害者や大きな災害で理不尽に命を落とした人たちの遺族にとって、その人たちの存在の欠如だけが確かな真実といえるのではないか」という意味の言葉が、作者によるものだったか、他の誰かのものだったか、今確かな記憶がない。
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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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