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本を読むということ

 亡母の実家へ親戚が集まった折、従姉妹に伯母の現状を聞いた。伯母は現在90歳を過ぎている。認知症が進んで要介護認定5の状態になり、自宅での介護が難しくなったため特別養護老人ホームに入所したそうだ。
 身内が特養を訪れると、入所する直前まで同居していた長男の妻の顔はわかるという。ところが嫁に出た娘の顔は、時として不分明になるらしい。お嫁さんが笑いながらそう言うそばで従姉は微苦笑していた。
 古い記憶ほど残るというが、本人に名前を聞くと実家の姓を名告るそうだ。婚家の姓も何年か前に亡くなった伯父のことも忘却の彼方らしく、どうやら娘時代にまで退行している状態らしい。

 伯母は本を読むのがとても好きな人だった。
 子供時代に母の実家へ親戚中が集まったとき、伯父に意地悪をされながら本を読みふけっていた伯母の姿をかすかに覚えている。本を読む女の人はどこか夢見がちなところがあると思う。そういう所が実務家肌の伯父には癇にさわったのかもしれない。根性の悪い夫が寝たきり状態になってしまって、伯母は何年も介護せざるを得なかった。今のように介護保険もなければ、老健も特養もなかった。

 伯母がそういう時代のことをすっかり忘れてしまって、娘時代に戻ってしまっているのは娘時代がよほど幸せだったということだろうかと思う。
 多分伯母は幸せだった若い頃、自分が読んでいた小説の作者に大いに憧れていたのだ。夫の名前を聞かれると「○○ ○○さん」と昔の小説家の名前を挙げるそうだ。もう本当に実際に夫だった人の事は忘れてしまっているのだ。認知症が進んだ結果、妄想が妄想でなくなっているとしたら、本人にとってはそれはそれで幸せなことなのだろう。菊池寛だったか有島武郎だったか、他の誰かだったかは聞いたけど忘れた。

 話の筋道がずれるが、若い頃は本を読むということを、小説であれ物語であれ文学作品を読むということと同義であるかのように考えていた。文学作品だけが本ではないのだと、このごろやっと思うようになった。
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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
夫と猫2匹と暮らしています。リンクはフリーということでお願いします。

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