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地下鉄の中で

 所用で出かけて地下鉄に乗っていた時、奇妙な老人を見かけた。沢山のどんぐりに糸を通して首飾りのように幾重にも巻きつけているのだ。さらにその一箇所に直径5・6センチもあろうかという大きな鈴がついていて、それが胸の真ん中あたりにぶら下がっている。老人は私のはす向かいの離れた席に腰を下していた。
 異様なのはその首飾りだけで、決して小奇麗ではなかったが普通のシャツとズボンに帽子をかぶっている。足元はサンダル履きでよく見ると垢まみれで汚れていた。再び視線を上げて顔を見ると色黒に見えていたのは汚れのせいにも見える。その風体を眺めているうちに、何故かこの人は首に数珠をかけているつもりではないかという気がしてきた。
 彼が腰を下した座席の近くに座っていた中年の男性があからさまに顔をしかめ、吐き捨てるように何か言って席を移っていった。老人は俯いて帽子を脱いだり被ったりして落ち着かないようだった。
 席を移った人は「臭い」と言ったのだ。人前でそういう態度をとったのは、自分は頭のいかれた爺など侮蔑の対象としか見ていないと周囲に示したかったからだろうか。
 
 老人はいつのころからか、自分に向けられる他人の視線の中に嫌悪や侮蔑が含まれているように感じていたのではないかと思う。そういう視線をはねのけるほどの強い気持ちはなく、狂いかけた頭で自分を修行僧のように見せかけようとしていたのかもしれない。世間から逸脱しているように見えるかもしれないが、自分は世俗を超越した人間なのだと見せかけようとし、自分でもそう思い込もうとしていたのかもしれない。どんぐりの数珠を首にかけることによって。
 というのは私の推測です。
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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
夫と猫2匹と暮らしています。リンクはフリーということでお願いします。

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