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最近読んだミステリー

2018年版「このミステリーがすごい」(宝島社)のランキングで、海外編の一位は「フロスト始末」(R.D.ウィングフィールド)、二位は「湖畔荘」(ケイト・モートン)だった。

フロスト警部のものは、以前シリーズ中の何かを借りてきたことがあったが、読みにくくて途中で投げ出した。何だかごちゃごちゃしていると思った。
それでも多くのミステリー評論家の投票で一位になったのだから、最新作は面白いのかもしれないと思い、二位の「湖畔荘」と一緒に図書館で予約しておいて借りてきた。

「フロスト始末」は作者が亡くなったため、シリーズの最終作だそうだ。
フロスト警部は、捜査方法は抜け道だらけ、経費を誤魔化すなど日常茶飯事といった破天荒な警察官である。そのくせ部下からの信頼は厚く慕われている。署長の差配のせいで人員不足に陥っている中、彼は次から次へと起こる重大事件に振り回されていく。
フロストを好ましく思っていない署長と、左遷を企んで呼び寄せたスキナー主任警部は、表面的にはまっとうな警察官でありながら腹黒く出世欲にとりつかれているようだ。その表裏のある官僚的な性格を皮肉るような、とても上品とはいえないフロストの冗談に笑いのツボをつかれてしまう。イギリス流のユーモアというものかもしれない。起こっているのは醜悪で悲惨な事件ばかりのはずなのに、読みながらつい声を上げて笑ったところが何カ所もあった。
フロスト警部シリーズの面白さが少しは分かったように思う。

フロスト警部に比べると「湖畔荘」はずっと穏やかで、ミステリーというより物語という感じだ。
70年前に起きた幼い男児の行方不明事件を核に、時を隔てて家族の歴史が解き明かされていく。これも一種の謎解きだからミステリーに分類されているのだろう。
登場人物それぞれの個性や生き方がきちんと描き分けられており、大団円では登場人物の思いがけない関係が明かされる。ハッピーエンドで終わるせいで、読後の気分は晴れやかだ。

以上の二作品と一緒に、フェルディナンド・フォン・シーラッハの短編集「罪悪」と「犯罪」も借りてきた。「コリーニ事件」と同じ作者だ。
二冊とも刑事事件専門の弁護士という仕事上から着想を得たと思われる事件が、簡潔な文体で書かれている。対象に過剰な思い入れがなく、弁護士の目線から犯人の人生が淡々と語られている。それが逆に読む側の想いを引き出しそうだ。
シーラッハは日本の俳句に興味があるらしい。この前に借りてきた「禁忌」(東京創元社)の後書きに書かれていたような記憶がある。
「犯罪」の中に収められている「ハリネズミ」という短編の主人公で、周囲の誰からも軽視されているカリムという末っ子が老獪だ。馬鹿を装っていながらその実は非常に賢く、誰にも知られないように独学で勉強し、投資をして金儲けをしている。窃盗犯として起訴された兄弟がカリムの証言で無罪になってしまうのだ。裁判の公正からはかけ離れているには違いないが、手口が鮮やかすぎる。家族の誰もがついに彼の本当の姿を知らないままで、そこがすごい。


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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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