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認知症患者の家族

近所の奥さんが用があって訪ねていらっしゃった。認知症の高齢男性B氏の奥さんである。
夫が元気なときは町内会の付き合いなどはすべて任せていたので、よく分からないまま役員をやっているとおっしゃったことから、話題が自然にB氏のことになった。

奥さんはご主人が同じことばかり繰り返して口にしたり、直前のことを忘れてしまっていたり、認知症初期の典型的な症状が出るようになってじきに、何か様子がおかしいからと大学病院へ検査を受けに連れて行かれたそうだ。いつごろのことかは聞き漏らした。
普通の精神科病院ではせいぜいMRIを撮るくらいのことだけれども、大学病院ではアイソトープを入れてシンチグラフィ検査までしてもらうのだと言われた。すべての検査が済んで結果を教えてもらうまでに3ヶ月近くかかったらしい。
あらゆる検査の結果から、海馬には異常があるが脳の萎縮は見られないという診断が下されたという。医師からは、海馬は訓練して鍛えることができると言われたそうで、奥さんはそこにわずかな望みを託していらっしゃるように見えた。

シンチグラフィとか海馬とか、平たく言えばどういうことだろうかと、後でインターネットで調べてみた。海馬は脳の中では新しくインプットされた記憶を整理して一時的に貯めておく部分で、アルツハイマー型認知症の場合、海馬やその周辺の神経組織が最初に異常を起こすらしい。一口に言えば、御主人は認知症の初期の認知症であると、正確に診断されたということのようだ。

現在は、一度だけでは無理でも同じ場所に何度も行けば道を記憶できる状態だそうだ。奥さんの方が色々なことが重なって苛々したりすると、ご主人がその気持ちを敏感に感じ取って精神的に不安定になるから、なるべく怒らないようにしているつもりだが、人間だからやりきれなくなることがあるとおっしゃった。そうだろうと思う。ご主人が時々おかしなことを言って歩くのは、そういうことなのだろう。

奥さんは、自分は夫の異常に早期に気がついてきちんとした検査も受けさせ、するべきことはしていると主張していらっしゃるのかなと感じた。素人が口出しできることではないけれども、正確な診断が下りたということは始まりに過ぎず、海馬を鍛えればという医師の言葉はもしかしたら慰めかもしれず、少しずつであるにせよ年齢とともに症状は進行していくのではないか、むしろこれから大変になるのではないかという気がした。

夫の身内が認知症であることが分かってマンションを引き払い施設に連れて行く時、エレベータに乗り合わせた初老の夫婦からかけられた冷ややかな言葉と迷惑そうな表情を私ははっきり覚えている。私たち夫婦が知らなかった間に、マンションの住人には何かと迷惑なことがあったらしい。
他人はただ迷惑をかけられたくないのだ。
誰でも認知症になる恐れはあるのだが、自分がそうなるまでは他人事に過ぎないことでただ迷惑なだけかもしれない。


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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
夫と猫2匹と暮らしています。リンクはフリーということでお願いします。

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