FC2ブログ

Entries

妄想混じりの話

高校時代の同級生で心理学を勉強して、精神科の病院に就職した人がいた。臨床心理士という仕事だったのだろうか。
卒業して何年か後のクラス会で会った時に、患者さんの言葉をどこまで信じていいのか分からないと苦笑混じりに言っていた。経験を積んでからはそれなりに対処できるようになっただろうが、まだ仕事について間がないころだったのだ。
妄想が起きている人の話は、どこまでが事実か分からない。そういうことだったのかと思う。

夕食後、近所の知り合いの奥さん、Aさんから電話がかかった。
一週間ほど前、やはり近所のどうやら認知症らしい高齢者B氏が、Aさんの家のベルをならして話を聞いてほしいと言ってきたという。Aさんは気のいい人である。B氏が認知症だという噂はとっくに聞いて知っているが、むげに追い返すようなことはできず、ついつい話を聞いたそうだ。
「妻が実家の家族に毎月かなりの額を仕送りしていたことを、銀行で聞いて初めて知った、妻はもしかしたら自分を捨てて実家へ帰ってしまうかもしれない、そうなったら自分は家事など何もできないから困ってしまう、奥さん(Aさんのこと)、家へ来てくれないか」
そんなことを言われて、困ってしまったと言う。Aさんには夫がある。未亡人ではない。そんなことはできないと断ると、どこかにいい人はいないかと聞かれたそうだ。どうやら再婚するつもりでいるみたいだったと、Aさんは言う。再婚するつもりも何も、B氏にも妻はいて同居している。

話を聞いて私は笑ったが、電話相手のAさんにしてみれば、少々気味が悪かったことだろう。私だってそんなことを言われたら・・・ちょっと困る。B氏が私にそんなことを言わないのは、猫のおかげかもしれない。B氏は猫嫌いだからだ。

B氏夫妻とは近所だから顔が会えば挨拶くらいはするが、それほど親しいわけではない。家庭の内情まで知るわけもないが、もしかしたらB氏は認知症からくる妄想を起こしているのではないかと思った。
「自分の資産はもっとあると思っていたのに、思っていたほど残っていない。しかも通帳を見ると毎月かなりの額が引き出されている。(多分奥さんは生活費を引き出しているだけなのだろうが、それはB氏の頭から抜け落ちている)何故か。妻が自分の身内に仕送りして使ってしまったからに違いない。妻が自分に対して冷淡なのはもしかしたら自分から去っていくつもりだからだ・・・」
例えばそんな風に思ってしまったのではないか。B氏の奥さんは身内への仕送りなどしていないに違いない。

困るのは、何も知らない人が聞いたら信じてしまいそうな話を、誰かれの区別なく話すことだ。B氏の奥さんも気の休まる時がないに違いない。時には鬱積した感情が昂じて、別れたいと口走ることもあるかもしれない。

Bさんの言うことは七割引で聞いていた方がよさそうだと言い合わせて、電話を切った。


関連記事
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://ohutarisama331.blog120.fc2.com/tb.php/533-c34addf8

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

ohutarisama

Author:ohutarisama
中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
夫と猫2匹と暮らしています。リンクはフリーということでお願いします。

月別アーカイブ

 

検索フォーム

QRコード

QR