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ルメートル「天国でまた会おう」を読んだ  10/16

ピエール・ルメートルの「天国でまた会おう」(早川文庫)を読んだ。ミステリーではなく、犯罪小説である。

一次大戦の終結が間近に迫っていた西部戦線で、戦功を上げようと企てた一人の将校プラデルが、敵軍から攻撃を受けたように見せかけて部下を狙撃する。兵士達の怒りをあおって最後の戦闘に駆り立てるためである。プラデルは、彼の企てに一人だけ気づいた部下のアルベールをも抹殺しようとする。危うく命を落としかけたアルベールを救ってくれたのは同僚のエドゥアールだったが、エドゥアールはそれと引き替えに顔半分と声を失うことになった。

エドゥアールは経済界の大物の息子である。子供の頃から背徳的な芸術家タイプで、謹厳な父親に背いてばかりだった。多忙な父親は手を焼くあまりに彼を疎んじるようになった。エドゥアールは自分が無残な状態で生き残っていることを、父親には絶対に知られたくないと願う。命を助けられたアルベールは彼のために尽くすほかなく、二人は奇妙な友情で繋がっていく。

一方、プラデルは戦後実業界に打って出て次第に頭角を現していく。没落貴族の出身である彼は家名の再興が自分に課せられた命題と考えている。
プラデルは弟が戦死したと思い込んでいるエドゥアールの姉の心を掴み、結婚することになる。
こうして関係者の運命が交錯しつつ、物語は進行していく。

市井の片隅で偽名を使いひっそりと暮らしていたエドゥアールは、戦死者のための記念碑を売り込む詐欺を思いつく。そして小心者のアルベールを巻き込んで話を具体化させていく。
同じ頃、やはり戦死者のための墓地を公的機関から請け負う事に成功したプラデルは、あくどいやり方で仕事を進めていくが、遂に悪事が露見して訴追を受けることになる。
エドゥアールは大がかりな詐欺事件として世間が騒ぎ出したころ、偶然にも父親の運転する車に飛び込んで命を落とすことになる。反目し合ってきた父親と息子の驚くべき邂逅だった。

資産家の生まれであるエドゥアールにとっては、金など大した意味を持つ物ではない。それ故、自分の不幸の埋め合わせをするように、他人からなけなしの金をむしり取るくらいは何でもないことのようだ。没落貴族出身の悪党プラデルや、小心者の庶民アルベールとは違う。
娘の結婚に際して資産を容易に娘婿に渡さないような契約をするほど、冷静で実務に長けたエドゥアールの父や、これまた肝の据わった姉、いずれもはっきりしたキャラクターに描かれている。
傷痍軍人であり芸術家であるエドゥアールの壊れた顔や仮面など、何となく皆川博子氏の幻想的なミステリーに近い雰囲気を感じた。

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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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