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黒砂糖もどき  10/2

子供の頃、実家では普段使いの甘味料に、サトウキビの絞り汁を飴状に煮詰めた黒糖を使っていた。それを家では黒砂糖と言っていた。現在市販されている沖縄の黒砂糖と中味は同じ、ただ煮詰め方があまいものだ。
白砂糖など、お祭りや盆で来客があって寿司を作る時、酢飯に色がつかないように使うくらいのものだった。

毎年秋になると稲刈りの合間を縫って、自宅使いの一年分の黒糖を作っていた記憶だ。畑のサトウキビは子供のオヤツの分に少し残して、ほとんどその材料になった。

サトウキビは前日に刈り取って、節ごとにのびている葉を落としておく。朝食を済ませると早速、父はリヤカーの荷台に薪の束を載せ、その上にサトウキビを積み上げて出発する。私は父の曳くリヤカーの後ろを押すためについていった。
30分ほどかけて着いた先は、隣接する地区で精米所を営んでいる個人の店で、サトウキビを絞るローラーと煮詰めるための大釜を賃貸ししていた。

店の主人と言葉を交わし、通い帳に何やら数字を書き込んだ後、父はサトウキビを何本かまとめて大きなローラーに挟み込んでいった。機械のモーターが唸り声をあげ、サトウキビの絞り汁が下に受けた桶にしたたり落ちる。
ローラーに挟み込まれる前の、積み上げたサトウキビから一本抜き出して、私は店の外に出る。皮を歯で剥き、白い茎を少しずつ噛みちぎっては、しがんで汁を吸い、カスを吐き出す。ローラーで絞られたカスは、多分私の噛んだ後のカスとは比べものにならないくらい、水分を搾り上げられているはずだ。

店の外でうろうろしているうちに、全部を絞り終えた父が桶を運び出す。道路を挟んで向かい側の小屋がけの下に、大きな土作りの竈が並び、大釜がかかっている。絞り汁をその中にあけていよいよ煮詰め作業だ。薪はそのための燃料だ。

煮詰める作業には時間がかかった。
昼食はご飯だけを弁当箱に詰めて持っていき、近くの店でサンマを買ってきて、父が竈の中の熾き火を炊き口近くにかき集め、太い針金で作った火箸を拡げた上にのせて焼いてくれた。真っ黒な焼き上がりだったが、何故だか今では懐かしい。弁当箱の蓋にのせて、父が箸で器用に身をさばいてくれた。

焦げ茶色に煮詰まったサトウキビの汁はとても熱くて、やけどをするといけないから、ある程度冷めるまで待たなくてはならない。頃合いを見計らって、父は注意を払いながら柄杓でカメに黒糖を移す。最後は釜のふちを少し持ち上げて傾けるようにして、柄杓でこしげるようにさらえていた。冷めすぎるとドロドロになって鍋にへばりついて残る分が多いから、熱くてもさらさらしているうちに移していたように思う。
家へ持ち帰って一晩寝かせておくと、粘度が上がって箸に絡まるようになる。

朝早くに家を出ても、全部の作業が終わるのは午後三時くらいになった。
帰り道は荷物がうんと少なくなっていたので、私もリヤカーのに荷台に乗せてもらった。途中の長い登り道にさしかかった所では降りて、リヤカーの後ろを押す真似をした。



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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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