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「トスカーナの贋作」を見た  9/13

DVDで「トスカーナの贋作」を見た。

「贋作」という表題のエッセイを出版した作家が、ファンの骨董商(ただし扱っているのはすべてレプリカ)の女性とトスカーナ地方の名所へ出かけていく。休憩するために入ったカフェで夫婦と間違えられたのをきっかけに、偽の夫婦になりきって芝居を始める。
それから後の二人の言葉の応酬は夫婦のやりとりそのものだ。視点のずれや食い違い、相手に対する願望や不満、あれもこれもが諍いの種になり、饒舌が極まって次第に罵り合うようになるところ、結婚して15年もたてばそうもあろうという夫婦そのものなのだ。
あまりに真に迫っているため、最終章で二人が分かれた元夫婦だったと種明かしされるかもしれないと思ったほどだった。けれどもそういうことにはならず、二人は目の前の見立て配偶者に、過去に分かれたらしい元夫、もしくは現実の妻を重ね合わせているかのように、男女間の噛み合わない口論を続けていく。結局最後まで虚構と事実の区別がつかないうちに、女性が15年前の新婚当時に宿泊したと見立てた宿の一室でドラマが終わる。

成り行きで夫婦を演じ始めるというのは唐突で、いくら映画の中のことといっても少し不自然な感じを受けたが、ここから先観客は、映画という虚構の世界の中で、さらに別の虚と実が混じったドラマが展開されていくという、二重構造にはまりこむことになる。奇を衒ったともいえるが、妻にとっての夫像、又は夫にとっての妻像は概念的なものだと示唆する狙いがあったのかもしれない。
   
観光地で出会うそれぞれの夫婦のかたち。希望に満ちた新婚の夫婦、半ば悟ったような初老の旅行者の夫婦、体が不自由になった相手をいたわりつつ歩む老夫婦。年代によって夫婦の姿は変容する。
夫婦はもとより別個の人格であって、自分の分身などではあり得ず、あくまで伴侶なのだ。相手が自分のすべてを理解してくれることを望むのは、無理なことだ。それを分かった上で夫婦を演じているうちに、長年連れ添った老夫婦になっていく、そういうものではないかしらん。

『結婚前には両目を大きく開いて見よ。結婚してからは片目を閉じよ』という諺で簡潔に要約されるのが結婚生活ではないか。



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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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