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高校一年生の夏  7/31

高校一年生の夏だった記憶だ。
なぜだか、祖母の甥に当たる人が亡くなった後、未亡人になった奥さんが一人残されている家に行くように言われた。

そのお宅には小学校の高学年の時、一度だけ祖母に連れて行ってもらったことがあった。平屋建ての静かなたたずまいの家で、建物の中央に玄関があり、それを挟んで左右に部屋がいくつかある家だった。
夫婦には子どもができなかったので、奥さんの親戚筋の男の子を養子にとって育てていた。男の子は私より一・二歳年長で、大人の会話の中で中学から私学に進学させる話が出ていた。子供心に教育熱心な印象を受けたが、その後実際にどうなったかは興味がなかったので知らない。
数年後、ある日突然ご主人の方が倒れてそのまま急逝され、父が葬式に行ったのを覚えている。祖母と父との会話から、奥さん一人では育てられないから、養子にとった男の子は実親のもとに返されたと聞いた。奥さんが一人住まいになったのはそういう事情からだった。

よく知らない家へ一人で行かされるだけでも妙なことなのに、しかも祖母は「おばさんが寂しいから泊まってくるように」と言ったのだった。何も聞き返しもせずに大人の言いつけをそのまま聞いて、今から思えば私は鈍な娘だったと思う。

電車を乗り継いで道を尋ねながら行ったら奥さんは留守だった。我が家には当時電話がなかったので、連絡もしてなかったのだ。奥さんが帰ってくるまで家の前でぼんやり立ちすくんでいたように思う。

あの時なぜ泊まりがけで行かされたのか、今もってわからない。奥さんは不思議そうな顔も見せずに、私を家へ上げてくれた。いくら親戚筋とはいえ、亡夫の従兄の子というような薄い関係なのに、突然のように泊まりがけで来た娘をどうして受け入れる気持ちになったのか。もしかして私の知らないところで、何か大人の申し合わせがあったのだろうかと思うこともある。

当時の私はただただ町の暮らしに興味しんしんで、奥さんと一緒に買い物に連れて行ってもらって、肉屋さんでささみを二筋などという少量の買い物に驚き、それをさっと湯がいて半生で食べるのに驚き、奥さんのきれいな下着に驚き、ソバをどっぷりつけ汁に浸けないように注意され、田舎の女の子が行儀見習いに来ているようなものだった。食後洗い物をする時、私が水道の蛇口から水を細く出していると、奥さんの手が伸びて蛇口から水が勢いよく出た。実家では水道の水は大事に使っていたので、ちょっと驚いたのを覚えている。
一人になった奥さんは、空いた部屋を下宿として貸していた。進学校の高校に家が遠くて通えない男子生徒が二三人下宿していた。彼らは夏休みの補習が終わると自宅に帰っていったが、私が行った時にはまだ下宿にいた。高校生同士、はにかみながら話そうとすると、奥さんがすぐ近くで監視しているみたいだった。(間違いなんか起きっこなかったけどね)

何日滞在したのか今でははっきり覚えていない。
その年の暮れに奥さんは病気になり、夫の後を追うように亡くなったと聞いた。一年前後で二人が亡くなってしまうなんて、きっと仲のいい夫婦だったのだろう。


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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
夫と猫2匹と暮らしています。リンクはフリーということでお願いします。

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