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「誰でもない女」  6/21

英国の作家サマセット・モームは一時期秘密諜報部員だったそうだ。その実体験をもとに「アシェンデン」という本を書いたと言われている。
若い頃モームの英国人らしい皮肉のきいた小説が好きだったので、何冊か読んだことがある。「アシェンデン」は確か新潮文庫で読んだ。モーム自身がモデルのアシェンデンは表向きは作家、裏ではスパイとして活動している。時には危ない目に遭うことがあり、その繋がりでスパイの末路に触れた文章があったように記憶している。

不意にスパイの末路などということを思ったのは、たまたまGyaoで「誰でもない女」という映画を見たせいだ。このノルウェーとドイツの合作映画は劇場では未公開だったらしい。
レビューで好評だったのと、ノルウェーの映画などめったに見られないからと興味を惹かれて見た。なかなかの佳作で、このようないい映画を無料で見られたのは有り難い。

第二次大戦中、ナチ・ドイツが侵攻したノルウェーでは、ドイツ兵とノルウェー人女性の間に子どもを作ることが奨励され、生まれた子どもはドイツに送られた。ところが戦後になって政情が変わると、ドイツ兵の子どもを産んだ女性はノルウェー政府によって収容所に入れられるなどの差別や迫害を受けてきた。

その中の一人オーゼのもとには、戦後成人した娘のカトリネが帰ってきており、いまではカトリネの夫と娘さらにひ孫と、一家として暮らしている。
ところがカトリネを名乗っている女はにせもので、その正体は東ドイツの秘密警察のスパイだった。本物のカトリネは東ドイツから命からがら亡命して母親の元にたどり着いていたのに、オーゼの留守中に秘密警察の手にかかって命を失っていた。
東西の壁が崩壊するまで、ノルウェーは東ドイツにとって敵対する西側の最前線でもあったから、ノルウェー人の家庭に送り込まれたカトリネを名乗る女のようなスパイが、あちこちに入り込んでいたらしい。

政府に対してオーゼのような女性に対する謝罪を求める裁判を起こそうと奔走する弁護士が現れたことがきっかけになって、カトリネを名乗ってきた女の正体が次第に明らかになり、家族だと思い込んできた一家は苦悩する。

秘密警察の残党から他国に移ることを指示された偽のカトリネは、出国したと見せかけて一旦自宅へ戻り、家族に警察に自首することを誓う。けれども警察に向かう途中でブレーキがきかなくなり事故で命を失ってしまう。もちろん裏切りを恐れた組織によって車に細工されたからである。
他人の人生を乗っ取って生きることで幸せになれたと思っていたのに、結局そうはいかなかった。何とも哀しい一生だ。

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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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