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狂気  4/13

若い時、島尾敏雄の「死の棘」を買ったが、どうにも読むのがつらくて長い間本棚に放置していた。
DVDで「奇跡の海」とか「ピアニスト」を借りたときも、途中で見るのが嫌になった。
共通しているのはどれも精神を病んでいく人が主人公であることだ。

人は存外簡単に狂気に陥るような気がしている。 
映画や小説の世界はバーチャルなのに、若い頃、読んだり見たりするのがつらかったのは、実生活での自分を投影してしまっていたからかもしれない。自分も思い詰めて気が狂ってしまいそうに感じていたからだと思う。あちら側の世界にいってしまうことを怯えたのだ。

50歳を過ぎた頃に「死の棘」を読んだら、つらくも何ともなく、するすると読めた。夫の浮気がきっかけで神経を病む女の人の話がまったく他人事にしか思えず、第三者として読むことができた。
年をとると、感受性は鈍くなり、神経は太くなる。

アルヴテーゲンの「バタフライ・エフェクト」に、まだ若い男が、強盗に銃を突きつけられて恐怖のあまり失禁した事実を妻に明かすことができず、それをきっかけに神経を病んでいく有様が描かれている。どうしてそんなことで病んでしまうのかと少々呆れたが、病んでいく自分を正当化するかのように、「新グローバル顧問団」というエリート集団が大衆に対してティッティテイメントという愚民政策を施したとか、ダルフールの人道支援をしようとしたベルギーの画学生をルイ・ヴィトンが訴えたことの不当性とか、人間的に非常にまっとうな内容を述べるくだりがある。小説の中なので、彼が述べる内容が虚構か事実かどうかは不明だが、狂うことには真実に肉薄する面があることを表現しているように思う。

でも、まあこの年になってみると、狂うことより、認知症の心配の方が大きいわ。


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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
夫と猫2匹と暮らしています。リンクはフリーということでお願いします。

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