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嫁入りの思い出  4/10

今から半世紀以上も前、私が子供だった頃は、結婚式場などなかった。そもそも田舎では結婚式という呼び方さえされず、「嫁入り」と言っていた。

婿養子は別として、嫁入りは新郎の自宅で執り行われる。別室には、先立って運び込まれてきた嫁入り道具が華々しく飾りたててお披露目されており、座敷は二間を開け放し、縁側に面する建具はすべて取り払われている。近所の人たちに公開するためだ。

実家で花嫁姿になって、親に別れを告げた新婦を仲人夫妻が迎えに行く。花嫁と仲人が同乗したタクシーに花嫁側の親兄弟・親戚がやはりタクシーで続いてやってくる。車が到着すると同時に、花婿側の男の人たちが景気よく「嫁入り菓子」をばらまく。子供たちの多くはそれを拾うのが目的で嫁入り見物に来ていた。女の子の中にはきれいな花嫁姿に憧れて見に来た子もいたかもしれないが。

当時の花嫁さんは打ち掛けなどは着なかった。文金高島田のかつらに角隠し、黒地に裾模様の大振り袖に丸帯とかかえ帯を結び、末広、筥迫を懐に、というような姿だった記憶だ。角隠しは披露宴になってから外したかもしれない。

床の間を背に新郎新婦と仲人が並び、両家の親類縁者がそれぞれの側に並んで座る。さらに庭先から近所の人が立ち並んで見守る中、三三九度の杯が交わされる。三三九度の酌はたいていは着飾った親戚の子供がつとめ、見物の子供たちもそこまでは目をこらして見ていた。披露宴になると縁側の建具がはめられて非公開になるので、拾った菓子を手におばさんも子供も帰り道についた。そういえば見物客の中に男の人の姿はなかったように思う。

中学生時代、友人に聞いた話だ。友人の住んでいた地区で嫁入りがあって、花嫁さんがタクシーに乗ってやってきた。近くに少々普通ではない男の人が住んでいて、タクシーが到着したのを見ると、子供みたいにオーライ、オーライとやったそうだ。田舎のことで道幅は狭い。運転手さんが真に受けて車を動かしたところ、見事に脱輪したそうだ。衝撃で花嫁さんのかつらが脱げ、てんやわんやだったらしい。
輪になって話を聞いていた私たちは笑い転げた。他人事だったし、箸が転んでもも可笑しい年頃だったので。


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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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