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勘違いの宿題

 小学校時代、年に1・2回全校生徒が講堂に集まって映画を鑑賞する会があった。映画館から映写技師さんが出張してくれたのだったか、映写機とフィルムを借り受けて先生が操作されていたのかは覚えていない。
 アニメの「白蛇伝」とか「ダンボ」とか、邦画だと「にあんちゃん」を見たのは記憶している。余談だけれど「白蛇伝」に登場した動物の中に白黒の熊のような動物がいた。それがパンダだったと分かったのはずっと後年のことだ。

 小学校へ入って初めての映画鑑賞会の後、宿題が出た。「今日見た映画の中で一番心に残った場面を絵にしてきなさい」というのだ。
 その日の映画は当然ながら文部省推薦の児童映画だった。自分達と同じくらいの年で生活程度も似通った(あのころは皆貧しかったという意味で)子供が主人公の映画だったはずだ。はずだというのはあらすじも何も全くおぼえていないからだけれど。

 ところで、現在なら予告編を上映するところだが、 昔は映画本編の前にニュース映像を流した。ニュースといってもフィルムが田舎の小学校へ回ってくるころにはとっくにニュースじゃなくなっているけれど、その中にトピックスという映像があった。
 その日のトピックスは外国人の赤ん坊とその母親による水中バレーだった。深いプールの中で母親が赤ん坊をまるで振り回すようにして泳がせており、赤ん坊はくるくると水の中を回転していた。二人の息が泡になって浮いていくのを見ているうちに、自分が水中で振り回されているような恐怖感と、めずらしいものを見た驚きとが混じって、私は息をつめてその映像を見つめた。映画本編が始まってもその映像に頭の中を占領されたままだった。

 だから当たり前みたいにその日の宿題は母子による水中バレーショー の絵を描いた。それしか描くものがなかったのだ。
 翌日担任の先生が全員の絵を一枚ずつ掲げて皆に見せ、どういう場面に心引かれたのか説明するようにうながしていかれた。順番が進むにつれ、私は自分と同じ絵を描いている子が一人もいないのに気がついた。あんなにすごかったのにどうしてだろうと思った。
 いよいよ私の絵の番が来た時、一目見て先生は怪訝な表情をされた。尋ねられて私は水中バレーと答えたが、クラス全員がきょとんとしたままで、先生も何もおっしゃらずに次の絵に進まれて、やっと理解したのだ。
 宿題の意図は映画本編の中で感動した場面を絵にすることだったのだと。
 子供のころから呑み込みの悪い子だったのだ。
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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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