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トマス・エンゲル「瘢痕」 2/15

北欧ミステリーの新鋭、トマス・エンゲルスの「瘢痕」を読んでいる。

新時代のミステリーらしく、道具立てにパソコンやインターネットといったデジタルが多用されている。「ミレニアム」三部作のリスベットはハッカーだったが、「瘢痕」の主人公はネットニュース社の記者という職業で、警察内部の秘密の情報提供者とは特殊なプログラムによるチャットで情報を交換していたりする。そういう小説を私たちはアナログ代表の活字本で読んでいるわけだ。

日本では新聞社が各社付属のデジタル版としてニュースを出しているが、「瘢痕」を読むと、ノルウェーではデジタル専門の独立系新聞社があるらしく思われる。夏の間はともかく、雪に閉ざされた冬期は紙の媒体を配達するのは大変なことだろうから、彼の地ではデジタル版が発達しているのだろうか、とふと思った。現状は分からないが。

前に読んだ「喪失」の女性主人公シビラもそうだったが、この小説の主人公ヘニング・ユールも家族の絆から見放された、孤独な存在であるようだ。父親は早くに亡くなっており、アルコール依存症の母親は、へニングを世に出る意欲の足りなかった人間として嫌っている。へニングと反対に意欲があって今では法務大臣にまでなっている妹とは何か重大な行き違いの結果、お互いに行き来も通信もしてない。同業の記者であった妻とは仕事の忙しさのためにうまくいかなくなって離婚した。一粒種だった息子はへニングが預かっている時に火事で亡くなってしまい、彼自身もその時大けがをし、心にも深い傷を負っている。
火事の後二年間の治療とリハビリに費やされた休職期間が終わり、復職したへニングがいきなり殺人事件の取材にかり出されるところから、このミステリーは始まる。

事件解決の内容自体の面白さと別に、警察内部の情報提供者の正体とか、妹との確執の原因とか、息子を亡くした火事の出火の犯人(どうやら放火だったらしい)とか、触れられていながら明かされていない部分が多く、謎を残したままなので気持ちが残って後を曳く。これはヘニング・ユール・シリーズの第一作であるためで、次の作品から徐々に明かされていくのだろう。
ネット上で検索してみたが、第二作以降はまだ翻訳されていないみたいだ。

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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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