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洋裁

 若いころ一時洋裁塾に通ったことがあります。その頃の私は特に何をするでもなく、家にいる状態でした。家に引きこもってぼんやりしているよりは、洋裁くらいできるようになった方がいいかもしれないと思ったのです。プロになるつもりではなくても、当時はまだ既製服の種類がデザインもサイズも現在ほど豊富ではなかったので、自分や家族の洋服を作ろうという人が結構いました。そういう人のために町なかに洋裁塾や教室があって、お嫁入り前の娘さんや暇のある主婦を集めて教えていました。ひところはどこの教室もなかなか盛況だったようです。
 私が通った頃はそういうブームが下火になったころで、通ってくる生徒さんも少人数でした。先生の方も一時の盛況が嘘のように静かになってやる気をなくしてしまったのか、教えるのはそっちのけでお仲間とボーリングへ行ってしまい、残された生徒は古参の人を中心に洋裁の本や雑誌を見ながら、適当にやっているという状態でした。熱意のある生徒さんは不満があったかもしれませんが、私にはそういう状態がむしろ心地よく、要するにやる気のない生徒でした。次に縫うもののデザインを決めかねて、半日も雑誌を眺めて過ごしたなどということがよくあります。
 
 塾で教わって身についたことといったら、糸端の結びこぶの作り方くらいだったと思います。私の教わった先生は、針に糸端を巻いてから針を抜くというやり方でこぶを作るようにと指導していました。指の腹で縒り合わせて作るときれいにできないからというのです。そんな仔細なことはどちらでもよさそうですが、最初にそう教わったので癖がついてしまい今でもそうしています。
 それはともかく、かなりいい加減にではあるけれど洋裁の基礎的なことは身につけたということにして、一年半くらいで塾をやめました。再び家に引っ込んだわけですけれど、しばらくすると知り合いが布地を持ち込んでくるようになりました。もちろん家庭洋裁程度と承知の上ですから、安いときについ買ってしまった布地とか、中にははぎれをうまく裁ち合わせて縫ってとかいう依頼もあって、知っている人ゆえあからさまに嫌な顔はできませんでしたが、内心何様のおつもり?と思ったこともあります。料金なんて雀の涙ほど、勉強させてもらうのだからしかたがないと自分に言い聞かせつつ縫いました。
 いろいろあっても人のものを縫うとなるといい加減なことはできません。流石の私もそれなりに頑張りました。幸いというべきか、そもそも塾でも生徒同士で洋裁本を見て問題点を解決していたくらいですから、泥縄式の独習には慣れていました。襟の角をすっきり仕上げるには縫い代をどうカットするかとか、袖付けの際のピンの打ちかたはとか、縫うことに関してはいろいろなコツを書いた本が沢山出ているので、雑誌のデザインを参考に縫うくらいのことは何とかなるものです。その代わり本代はかかりましたけれど。プロになるためには優れた指導者につく必要がありますが、家庭洋裁程度であれば独習でも何とかなると今でも思っています。
 
 そうして頼まれれば縫ったりしていましたが、実は自分の物はあまり縫ったことがありません。こういうものを着たいと思う洋服のイメージが私にはないのです。おしゃれではないし、出かけることが少ないのできちんとしたよそいきも必要ないですし。縫っても着ないので次第に作らなくなりました。(普段着はスーパーの安物でいいんです))
 思うのですけれど本当に熱意をもって洋服が作れるのは、着ることが大好きな人が自分の着たい服を作る時ではないでしょうかね。他人の洋服なんか作るよりよほど楽しくて、何倍もやり甲斐があるというものでしょう。
 既に物故された方で、昔雑誌「四季の味」の編集長だった森須滋郎氏は、それ以前は確か雑誌「マダム」(既に廃刊)の編集長でもあったと記憶しています。食べることにも着ることにも熱心で、若い時にコートを自分で縫ったことがあったそうです。「なめるようにして縫った」と書かれた文章を読んだことがあります。
 
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中部圏に住む1948年生まれの専業主婦です。
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