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「金曜日の編み物クラブ」を読んだ

 目下のところ興味の対象が編み物とか編み機に向かっているせいか、図書館で本棚の間を通り抜けながら本の背表紙の列を目で追っていた時、「金曜日の編み物クラブ」という題名が飛び込んできた。手にとってみたらカバーに貼り付けられた帯に「ジュリア・ロバーツ 制作 主演 映画化決定」と印刷されていたので、読んでみたくなって借りてきた。

 登場人物の中心は、一人娘を育てながら、0〈ゼロ〉から立ち上げた毛糸店を発展させてきたシングルマザーのジョージア。身ごもった途端に、娘の父親であり同棲相手であったジェイムズに去られたという苦い経験をしている。途方にくれていた時巡り会った裕福な老婦人がアニタで、編み物を仕事とするように道を開いてくれた上、その後も長い間彼女を支え続けている。
 ある時突然店に、ジェイムズと、長い間音信不通だったキャシーという女性が、立て続けに現れる。どちらも今は相応に出世していたり、キャシーに至っては結婚したことでセレブになっている。毎日身を粉にして奮闘しているジョージアは複雑な気持ちだ。その一方、店に出入りしている客のうちの何人かが終業後も居残っているうちにクラブが出来てしまう。ジョージアを中心とした個性溢れる成員たちが、次第に人間同士繋がっていく様と、余儀ない別れの訪れがあらすじだ。

 大学入学時の行き違いからほとんど絶交状態になってしまった後、キャシーは学生時代にセレブのボーイフレンドとつきあい始めた。両親は玉の輿婚に大賛成で、親に背中を押されるように結婚を決めてしまうが、相手の男の親はガールフレンドとしてなら大歓迎、結婚相手としては大反対だったものだから、彼女の結婚生活は表面の華やかさに反して決して幸せなものではない。何より肝心の夫が彼女を玩具のようにしか扱ってくれない。自分では何もできないキャシーにしてみたら、自分の力でじっくりとキャリアを築きつつあるジョージアは気になって仕方がない存在だ。
 ジョージアは、古くからカジュアルな衣料とされてきた編み物のイメージを払拭したいという考えを持っている。キャシーからのパーティ用のニットドレスの注文は渡りに舟であった。ところが何度も打ち合わせを重ね、最高級の糸を使って自らの手で編み、出来上がりまで6週間もかかったドレスがキャシーの気に入らず、もう一枚作る事になる。お金持ちの気紛れに思わず愚痴をこぼしたジョージアに、アニタは「キャシーはジョージアともっと関わっていたいのだ」と真意を指摘してみせる。年齢を重ねている分洞察力の鋭い女性という役回りだろうか。なるほどねと思った。
 この本の中には読んでいて「ああ、なるほどね」と納得してしまうところが多い。
 他にも、もう13才にもなろうとする子供がいた事実を両親に隠していたジェイムズが、ジョージアと娘のダコタを両親に引き合わせる場面など。
 ジェイムズの両親は二人とも教職にあった物堅い人たちであり、思慮深い。母親は結婚について、この国では人種や階級や宗教の違いが家族間に大きな軋轢を生むことがあるという。ジェイムズの一族は黒人である。それ故よけいに用心せざるを得なかったということだろうか。彼女は、だから白人とは結婚しない方がいいとは言ったが、それでもジョージアを心から愛しているのなら逃げてはいけないと、息子を諭すのだ。

 筋立てにも破綻がなく、人間観察のおもしろさに感心しながらするすると読める本だった。ただしところどころ、何の前触れもなく登場人物と場面が入れ替わってしまっている箇所があって、戸惑うことがあった。ドラマや映画の演出上では場面転換は珍しくないし、分かりにくくはないはずだ。もしかしたら、この本は初めからドラマないしは映画化を目論んで書かれたのだろうか。

 映画化されたら見てみたい。ジョージアが手編みで丹精込めて仕上げた2枚の作品がどのようなドレスとして画面に出現するか、見てみたい。

 
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